「司法書士土井節の法律豆知識」16

司法書士 土 井  節

 

「遺言作成について司法書士が支援すること」

相続登記が今までは任意というか、特にいつまでに完了しなければならないという規定はありませんでした。しかし、法改正により、相続登記が義務化(令和6年4月1日施行)され、その為に遺言の重要性は増してくると言わざるを得ません。
しかし、遺言をしても、無効になったり、相続人間の紛争の原因になったり、遺言書が行方不明になったりしては意味がありません。

「遺言書の内容」

1.遺留分について
・遺留分を考慮しない遺言は、遺留分減殺請求等後日、紛争の原因になりやすい。紛争を避けるため、遺留分権利者の範囲や権利行使割合を説明します。
2.補充遺言について
・受遺者等が遺言者より、先に亡くなった場合に、遺言が無効になるのを避けるための条項であって、その必要性や記載方法を説明します。
3.遺言執行者について
・遺言執行者を指定しておくことは、遺言の執行手続きが速やかに開始できることになります。指定しない場合の手続きを含めて、説明します。
4.附言事項の意味
・遺言書の中の附言事項は相続人間の紛争を避ける一助となるものです。その内容・効果を説明します。

「自筆証書遺言」

1.記載方法について
・記載方法によって、遺言が無効になってしまいます。無効にならないように、記載方法を説明します。
2.保管方法について
・遺言書を作成しても、保管方法により、見つけられないケースも出てきます。法務局の自筆証書遺言書保管制度を含めて、保管方法を説明いたします。

「公正証書遺言」

1.遺言書の原案作り
・公証人役場で公正証書遺言を作成するための、遺言書の原案作りを支援いたします。
2.証人について
・公正証書遺言を作成するためには、証人が2名必要です。証人の資格を説明します。又、司法書士が証人になる事もできます。

「その他」

1.不動産遺贈について
・不動産をそのままの形で遺贈する遺言をすると、受遺者から遺贈を不受領との回答により、その部分の遺贈が無効となります。その対策を説明いたします。


執筆者紹介  終活よろず相談士 M1850BX006
司法書士 土 井  節(ドイタカシ)
事務所 東京都港区芝大門2丁目12番3号 芝柳生ビル2階
電話   03-6638-6520
携帯電話 080-5207-1951


「司法書士土井節の法律豆知識」15

司法書士 土 井  節

 

「司法書士の選び方について1」

司法書士の業務もいろいろあります。
代表的なものは不動産登記手続・商業登記手続です。
これらは司法書士業務の中核をなすものですので、経験が少ない司法書士は少ないと考えますが、他の業務を中心に受任している司法書士には不動産登記手続・商業登記手続きに不慣れな方もいらっしゃいます。
その他司法書士の受任する業務として、成年後見業務・訴訟代理業務(訴額制限あり)・訴訟書面作成業務・家事事件書面作成業務・債務整理代理業務(負債額制限あり)・任意交渉代理業務(額制限あり)・遺産承継代理業務(紛争性なし)・相談業務(民事・家事・会社法務)(額制限あり)があります。
これだけ、受任業務範囲があると、すべてに精通している司法書士は少数派ではないでしょうか。
依頼者が司法書士を選ぶ場合に、報酬等費用が安いことのみで、選択すると、後々後悔することにもなりかねません。
手続き依頼前に、有料(8千円程度)であっても面談相談をした上で、よく説明を受けて、納得した上で、司法書士に依頼していただきたいと思います。
今回は依頼前の説明で違いを見分ける方法を説明いたします。

「成年後見事件-後見等開始申立書作成業務」

相談者は何らかの必要(不動産の売却・遺産分割協議等)があって、父や母等の後見等申立書作成を依頼したいと考えて相談にお見えになります。 
以下の説明をわかりやすくしていただける司法書士を選択してください。
(1) 親族を後見人等候補者として、後見等開始の申立をしても、専門職が選ばれる可能性があること。その場合に申立の取下げができないこと。
(2) 親族が後見人等に選任されたとしても、管理財産の多寡により、専門職監督人が選任され、報酬が発生すること。
(3) 後見人等は1年に1度家庭裁判所に定期報告をしなければならないこと。
(4) 後見等開始の審判が決定した場合に、必要事項の実行(不動産の売却・遺産分割協議等)のための条件並びに実行の可能性について。
(5) 必要事項の実行が終了したからと言って、原則後見は終了しないこと。

「債務整理-自己破産-破産・免責申立書作成業務」

相談者は借金の額が膨らみ、とても返済できないと思って、破産を希望して、
相談にお見えになります。 
以下の説明をわかりやすくしていただける司法書士を選択してください。
(1) 負債額が増加した経緯を聞いてくれる。
(2) 借金の問題は必ず解決方法があること。
(3) 解決方法には任意整理・個人再生・自己破産の方法があり、それぞれのメリット・デメリットの説明をしてくれる。
(4) 受任した場合に、生活再建のために、家計管理が必要であること。
(5) 事案が管財事件(簡易管財事件を含む)になる可能性が高い場合には、弁護士の受任を勧める。


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「司法書士土井節の法律豆知識」14

司法書士 土 井  節

 

「民法(相続関係)改正について」

民法改正は法律として成立していますが、それぞれ施行期日が異なり、当該期日が来るまでは経過措置が定められています。
今回は特別の寄与について説明いたします。
(1) 施行期日は2019年7月1日です。
(2) 施行期日前に開始した相続について、新法の規定を前提とする特別寄与料の請求はできない。 他方、被相続人の療養看護が新法施行前に行われ、相続が施行日後に開始した場合には、新法の規定が適用されるから、新法に基づく特別寄与料の請求は可能である。

「特別の寄与の請求者-特別寄与者」

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(被相続人の相続人を除く)

「特別の寄与の請求方法」

相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭を請求することができる。
当事者間で協議が整わないとき、又は協議ができないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求できる。

「特別の寄与の請求相手」

特別の寄与の請求は相続人全員にする必要はなく、各相続人にすればいい。

「特別の寄与の請求時期」

相続の開始および相続人を知ったとき時から6箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは請求できなくなる。

「法制定の趣旨」

旧法では、被相続人の介護療養に尽くした相続人以外親族は、当然に相続人ではないため、相続財産に対する権利がなく、一方、被相続人の介護を行わなかった相続人でも、相続人として相続財産に対する権利を有していた。
新設された法により、両当事者間の、実質的公平を図ることを目的とし、特別寄与者の請求権を認めることとし、その反面、遺産分割の手続きが複雑にならないように、今まで通り、遺産分割協議は相続人間で行い、特別寄与者は相続人に対して金銭請求を認めることとした。

「留意点」

・法で、特別寄与者の請求権は規定されましたが、相続人に、請求したとして、当事者間で、特別寄与であることや特別寄与料の合意を得ることが、結構難しいと感じます。
そうなると、家庭裁判所に協議に代わる処分を求めることになりますが、家庭裁判所が考慮する一切の事情(寄与の時期・方法及び程度・相続財産の額・その他の事情)を書面等で説明する必要が出てくるように、感じています。
生前に親族としての愛情や義務感に基づき無償で自発的に療養介護等の寄与行為をしていた場合でも、介護支援メモでもつけておいたほうがいいのでしょうか。


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「司法書士土井節の法律豆知識」13

司法書士 土 井  節

 

「民法(相続関係)改正について」

民法改正は法律として成立していますが、それぞれ施行期日が異なり、当該期日が来るまでは経過措置が定められています。
今回は遺言執行者の権限の明確化について説明いたします。
(1) 施行期日は2019年7月1日です。
(2) 遺言執行者の権限については、新法主義と旧法主義どちらを適用するか、以下に説明していきます。

「通知事務」

(1) 遺言執行者が任務を開始した時の相続人に対する通知義務は、施行日後に遺言執行者になった者は相続発生が施行日前であっても、新法が適用され、遺言の内容を相続人に通知しなければならないこととなった。

「遺言執行者の権利義務」

(1) 遺言執行者が遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務規定は、施行日後に遺言執行者になった者は相続発生が施行日前であっても、新法が適用され遺贈の履行は遺言執行者のみが行えることとなった。

「特定財産に関する遺言の執行」

(1) 「特定財産承継遺言」とは遺産の分割の方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言
(2) 相続時期に関係なく、遺言の作成期日と本法施行期日によって、新法主義と旧法主義を使い分ける。
(3) 新法を使える場合には、対抗要件具備行為が遺言執行者の権限に含まれる。

「遺言執行者の復任権」

(1) 相続時期に関係なく、遺言の作成期日と本法施行期日によって、新法主義と旧法主義を使い分ける。
(2) 新法を使える場合には、遺言者が遺言で別段の意思を表示していない場合には、遺言執行者は自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。

「留意点」

・相続分の指定、又は遺産分割方法の指定により、承継された財産は、旧法においては登記等の対抗要件なくして、第三者に対抗できるとされていたが、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないものとされた。
対抗要件具備行為が遺言執行者の権限とされたことの反面、登記等の対抗要件を速やかに、備えることが要請されることとなる。
遅滞等により、第三者に登記等がなされ、第三者に対抗することができない場合があり得ることに注意が必要である。


執筆者紹介  終活よろず相談士登録 M1850BX006
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「司法書士土井節の法律豆知識」12

司法書士 土 井  節

「民法(相続関係)改正について」

民法改正は法律として成立していますが、それぞれ施行期日が異なり、当該期日が来るまでは経過措置が定められています。
今回は配偶者居住権について説明いたします。
(1) 施行期日は2020年4月1日です。
(2) 配偶者居住権はこれまでにない新しい制度であるので、経過措置として、この法律の施行の日前に開始した相続については、従前の例によるとされていますので、施行期日以降の相続でしか使えません。

「配偶者居住権の制度趣旨」

(1) 配偶者の一方が亡くなった場合でも、生存配偶者がそれまで居住していた建物に引き続き居住できる方策
(2) 従来の遺産分割協議で、生存配偶者が居住用不動産を取得すると、他の相続人との関係で、将来生活のための財産を取得できない弊害がある。

「配偶者居住権の要件」

(1) 配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していたこと。
(2) 配偶者が以下の方法で配偶者居住権を取得したこと。
遺産分割協議/遺贈の目的/家庭裁判所の審判
 ※相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と居住建物を共有していた場合には、
  配偶者は配偶者居住権を取得できない。

「配偶者居住権に伴う権利・義務」

(1) 配偶者居住権の登記
 ※配偶者居住権を取得した配偶者は居住建物の所有者に対して、登記請求権を
取得し、これを登記した時はその不動産について物権を取得した者その他の
第三者に対抗できる。
(2) 配偶者による使用収益
 ※配偶者は従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用
および収益をしなければならない。 ただし、第三者に賃貸等して、収益を
上げるためには、居住建物の所有者の承諾を得なければならない。
(3) 居住建物の費用の負担
 ※配偶者居住権を取得した配偶者は居住建物の使用および収益に必要な修繕を
することができる。 但し、通常の必要費(建物・敷地の固定資産税・修繕
費等)は負担しなければならない。

「留意点」

配偶者居住権の登記は第三者対抗要件とされているため、所有権を取得した
他の相続人の相続登記と配偶者居住権の登記を連件で一括申請することが
必要と考えます。


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「司法書士土井節の法律豆知識」11

司法書士 土 井  節

「民法(相続関係)改正について」

民法改正は法律として成立していますが、それぞれ施行期日が異なり、当該期日が来るまでは経過措置が定められています。
今回は遺留分制度に関する見直しについて説明いたします。
(1) 施行期日は2019年7月1日です。
(2) 経過措置として、この法律の施行の日前に開始した相続については、旧法が適用されます。

「旧法の遺留分制度の問題点」

(1) 遺留分減殺請求の行使により、不動産に共有関係が生じていた。
(2) その結果、共有物分割の手続きが必要になる。
(3) 結果的に円滑な事業承継の障害になる。

「旧法の遺留分制度の問題点の対応策」

(1) 遺言者が遺言で出来ること
・附言事項に記載すること-遺留分請求権利者に請求を思いとどまるように
・遺留分減殺請求の順序の指定-事業承継に必要な不動産を減殺の順位を後に
することで、結果的に対象から外す。
(2) 遺留分請求権利者に生前に依頼すること
 ・協議の上、遺留分請求権利者に生前贈与をした上で、同人から遺留分減殺の
放棄の申出を家庭裁判所に提出してもらう。

「遺留分制度に関する見直しの要点」

(1) 遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化する。
 ※旧法で問題(1)とされた遺留分減殺請求権の行使によって、不動産に生じ
る共有関係は生まれず、金銭債権が生まれることになった。
(2) 金銭債務の支払いに関する相当の期限の付与
 ※遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が、金銭を直ちには
準備できない場合には、受遺者等は裁判所に対し、金銭債務の全部又は一部
につき期限の許可を求めることができる。
(3) 遺留分算定の基礎となる相続財産に含まれる生前贈与の範囲
 ※旧法では、遺留分算定の基礎となる財産に含める生前贈与は相続開始前の1
年間にしたものに限りその価額に算入するものと規定しているが、判例およ
び実務はこの規定は相続人以外の第三者に対して贈与がされた場合に適用さ
れるものであり、相続人に対する贈与は期間制限がないとされていた。
新法では相続人に対する生前贈与は相続開始前の10年間にしたものに限り
その価額に算入するものと規定された。

「留意点」

原則として、遺言作成において、相続人の遺留分を侵害しないことが大切です。


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「司法書士土井節の法律豆知識」10

司法書士 土 井  節

 

 

「家族信託制度のリスク」

家族信託にはメリットもありますが、デメリットもあることは認識してください。又、節税対策として、家族信託契約を検討することはあまりお勧めいたしません。
(1) 公正証書による契約行為の為、一方当事者の意向で変更・取消は不可
(2) 家族信託契約で不利益を受ける推定相続人の訴訟行為
(3) 脱税行為と認定される可能性

「家族信託を検討する前に」

(1) 財産の十分な調査
(2) 推定相続人の調査
(3) 家族全員の将来設計
(4) 推定相続人等利害関係人の調整・同意

「事前プランニングの重要さ」

事前の調査や関係者の意向をよく精査した上で、どのような家族信託プラン
を作成するかの検討が大切になります。
当然に、司法書士のみでプランを立てるのは論外で、税理士等との共同作業は必要であると考えます。

「事前プランニングの検討」

家族信託契約の登場人物は委託者・受託者・受益者ですから、多くても3名、少なければ2名で契約出来ることになります。
但し、契約当事者のみで事前検討をすることはお勧めできません。
当事者でない推定相続人等の遺留分減殺請求権を事実上なくすることもありますので、推定相続人等、利害関係人がはじめは賛成していたとしても、事前プランニングが出来上がった時点で、一緒に説明を受けることが、将来的な紛争予防に
なることを御理解いただきたいと思います。

「家族信託契約までのタイムスケジュール」

(1) 家族信託をしたい目的の明確化。
(2) 当該目的の為、計画する家族信託契約に付随するメリット・デメリットの説明。
(3) 事前調査事項の聞き取り。
(4) 事前プランニングの作成
(5) 事前プランニングの説明・検討
(6) 家族信託プランの修正
(7) 最終家族信託プラン
(8) 公正証書による家族信託契約書・遺言書の作成
(9) 家族信託契約書に基づく不動産登記手続き


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「司法書士土井節の法律豆知識」8

司法書士 土 井  節

 

 

「法定後見制度」

(法定後見制度では、本人の判断能力の衰えを補完する為に、本人の財産を管理したり、本人の為に介護契約や入所契約等の身上監護を支援する為に家庭裁判所から成年後見人等が選任されます。 選任された成年後見人等は本人の死亡まで、本人の財産及び生活全般にわたって仕事をする責任・義務があります。

・後見制度についての誤解があります。 正しくは以下の通りです。
(1) 後見等開始の審判の申立に後見人等候補者を記載できますが、後見人等を選ぶのは、家庭裁判所であり、候補者が選ばれないからと言って、申立の取下はできません
(2) 後見等開始の審判がなされた以上、本人の判断能力が回復しない限り、本人の死亡まで、後見業務が継続します。 後見等開始の審判の申立の目的が不動産の売却、遺産分割、債務整理であったとしても、当該案件が解決したとしても、後見業務は終了しません。
(3) 後見人等の業務は当然に本人の利益のために行うもので、後見人等の利益の為の行為は認められません。
(4) 後見人等の財産管理で、節税対策や利殖行為は当然認められません。

・後見制度の利用に適している状況
(1) 近い将来、本人の定期預金解約・株式売却が予定されている。
(2) 本人の財産管理を長男が行っているが、他の推定相続人から疑いの目で見られている。又、将来そのような紛争が起こりそうだ。
(3) 本人に対する介護等の方針が推定相続人間で意見対立している。

・後見制度を利用しない選択もある状況
(1) 本人の推定相続人が一人である場合
(2) 財産が普通預金のみで、キャッシュカードで出金できる場合。

このように後見制度を利用しない選択をした場合でも、親族として行政の介護サービス手続き・病院の入院手続き・施設入所契約はできますが、家庭裁判所の監督がなくとも、本人の為に最善の方法を選択する必要があることは言うでもありません。

「重要なポイント」

(1) 法定後見制度は基本、中途で終了することができませんので、後見等開始の申立をする前に、充分な検討をしていただきたいと思います。
(2) 出来る事、出来ないことがあることを理解してください。
(3) 後見制度を利用しない選択肢も有ります。

「対策」

何事にもメリット・デメリットがあることを意識していただき、後見制度利用の可否を含めて、本人・推定相続人の状況を専門職に相談していただき、最終的に判断をしていただきたいと思います。


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「司法書士土井節の法律豆知識」7

司法書士 土 井  節

♦相続対策(遺言)

・紛争を避けるための方策

1.「遺言」では適切な文言を選択する。
  相続させる⇒配偶者・子供、但し孫や兄弟に使える得る場合もある。
  遺贈する⇒孫・兄弟・第三者・行政区・宗教法人
  但し、行政区や宗教法人は不動産の遺贈を受けない場合が多いので、不動産
を売却換価の上、遺贈する遺言にする。
2.遺言に対して遺言無効の訴えを起こされる可能性がある場合には、公正証書
遺言で作成する。
3.事業承継等、一人の相続人に相続財産が集中する場合、対抗する相続人の遺留分減殺請求されることを念頭に置いて対抗手段を考えておく。
(1)少なくとも工場等の不動産は確保したい場合⇒減殺の順位を遺言で定める。
(2)遺言者の生前に他の推定相続人に生前贈与をするとともに、他の推定相続
人に遺留分放棄申述書を作成してもらい、家庭裁判所に提出する。
・遺言でできない事」
(1) 二次相続の指定
「私が死んだら、相続財産の全てを配偶者に相続させる。その後、私の配偶者が死亡したら、その相続財産は私の長男に相続させる。」
このように遺言で二次相続の指定をすることはできません。 
相続発生時に遺言という財産分割が完了し、遺産はそれを承継した人の所有財産となるためです。
事業承継や二次相続・三次相続を予定したい場面では、遺言のみが正しい選択肢と言えない場合もあり得ると言う事です。

「重要なポイント」

(1) 遺言は大切な手続きでありますが、それを生かすためには、充分な準備と起こりえる事態に備えて、対策を取ることが重要です。
(2) 遺言によって、出来る事、出来ないことがあることを理解してください。
(3) 遺言時の本人の状態や推定相続人の人数や状況により、自筆証書遺言か
公正証書かを選択する必要がある事。
(4) 遺言以外にも財産承継手続きがあることに留意してください。

「対策」

折角した遺言の作成方法が間違っていたり、又、自筆証書遺言が有るはずなのに、見つからない等の為、遺言の効力が発揮できないことを多くお見かけするところです。 そのようなことがないために、御依頼者の本当の目的を専門職に相談
していただき、遺言に限らず他の手段を含めて検討し、最終的に遺言をする場合でも、遺言だけでなく、他の手続きを併用することで、希望する財産承継手続きができる事を覚えていただきたいと思います。


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「司法書士土井節の法律豆知識」6

司法書士 土 井  節

♦相続について、間違いやすい言葉のシリーズ6です。

今回は「寄与分」⇔「扶養義務に基づく返還請求」

「寄与分」

法定相続分割合を調整する機能として、特別受益と寄与分がありますが、特別受益が割合認められる事が多い一方、寄与分は被相続人の事業に労務の提供や財産上の給付等財産形成に寄与した場合以外はなかなか認めてもらえません。

「扶養義務に基づく返還請求」

親の扶養義務は子供全員に均等にあるものとされていますが、一方、経済的に可能な子供が扶養すればいいとも言われています。

「重要なポイント」

(1) 親と同居し介護や扶養をしていても、遺産分割協議において、他の相続人が任意に認めてくれない限り、調停等で寄与分を認めてもらうのは困難だと思います。
(2) 遺産分割調停において、寄与分が認められないとして、扶養義務に基づく返還請求を主張しても、遺産分割調停においては取り上げません。
(3) 扶養義務に基づく返還請求は別の訴訟手続きで行うことになります。
(4) 他の相続人から、親と同居していて家賃相当額の特別受益を受けていたと主張されることもよくあることです。

「対策」

親と同居し介護や扶養をし、最後まで見送った場合の遺産分割協議について、他の相続人も同居していた相続人家族の苦労を内心理解していく場合が多いのですが、遺産分割協議に入る前に、いい加減な財産目録の作成や不用意な文書を送付した為に、他の相続人の反発を受ける事が多いので十分注意をしてください。


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