「司法書士土井節の法律豆知識」12

「司法書士土井節の法律豆知識」12

司法書士 土 井  節

「民法(相続関係)改正について」

民法改正は法律として成立していますが、それぞれ施行期日が異なり、当該期日が来るまでは経過措置が定められています。
今回は配偶者居住権について説明いたします。
(1) 施行期日は2020年4月1日です。
(2) 配偶者居住権はこれまでにない新しい制度であるので、経過措置として、この法律の施行の日前に開始した相続については、従前の例によるとされていますので、施行期日以降の相続でしか使えません。

「配偶者居住権の制度趣旨」

(1) 配偶者の一方が亡くなった場合でも、生存配偶者がそれまで居住していた建物に引き続き居住できる方策
(2) 従来の遺産分割協議で、生存配偶者が居住用不動産を取得すると、他の相続人との関係で、将来生活のための財産を取得できない弊害がある。

「配偶者居住権の要件」

(1) 配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していたこと。
(2) 配偶者が以下の方法で配偶者居住権を取得したこと。
遺産分割協議/遺贈の目的/家庭裁判所の審判
 ※相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と居住建物を共有していた場合には、
  配偶者は配偶者居住権を取得できない。

「配偶者居住権に伴う権利・義務」

(1) 配偶者居住権の登記
 ※配偶者居住権を取得した配偶者は居住建物の所有者に対して、登記請求権を
取得し、これを登記した時はその不動産について物権を取得した者その他の
第三者に対抗できる。
(2) 配偶者による使用収益
 ※配偶者は従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用
および収益をしなければならない。 ただし、第三者に賃貸等して、収益を
上げるためには、居住建物の所有者の承諾を得なければならない。
(3) 居住建物の費用の負担
 ※配偶者居住権を取得した配偶者は居住建物の使用および収益に必要な修繕を
することができる。 但し、通常の必要費(建物・敷地の固定資産税・修繕
費等)は負担しなければならない。

「留意点」

配偶者居住権の登記は第三者対抗要件とされているため、所有権を取得した
他の相続人の相続登記と配偶者居住権の登記を連件で一括申請することが
必要と考えます。


執筆者紹介  終活よろず相談士登録 M1850BX006
司法書士 土 井  節(ドイ タカシ)
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