「司法書士土井節の法律豆知識」8

「司法書士土井節の法律豆知識」8

司法書士 土 井  節

 

 

「法定後見制度」

(法定後見制度では、本人の判断能力の衰えを補完する為に、本人の財産を管理したり、本人の為に介護契約や入所契約等の身上監護を支援する為に家庭裁判所から成年後見人等が選任されます。 選任された成年後見人等は本人の死亡まで、本人の財産及び生活全般にわたって仕事をする責任・義務があります。

・後見制度についての誤解があります。 正しくは以下の通りです。
(1) 後見等開始の審判の申立に後見人等候補者を記載できますが、後見人等を選ぶのは、家庭裁判所であり、候補者が選ばれないからと言って、申立の取下はできません
(2) 後見等開始の審判がなされた以上、本人の判断能力が回復しない限り、本人の死亡まで、後見業務が継続します。 後見等開始の審判の申立の目的が不動産の売却、遺産分割、債務整理であったとしても、当該案件が解決したとしても、後見業務は終了しません。
(3) 後見人等の業務は当然に本人の利益のために行うもので、後見人等の利益の為の行為は認められません。
(4) 後見人等の財産管理で、節税対策や利殖行為は当然認められません。

・後見制度の利用に適している状況
(1) 近い将来、本人の定期預金解約・株式売却が予定されている。
(2) 本人の財産管理を長男が行っているが、他の推定相続人から疑いの目で見られている。又、将来そのような紛争が起こりそうだ。
(3) 本人に対する介護等の方針が推定相続人間で意見対立している。

・後見制度を利用しない選択もある状況
(1) 本人の推定相続人が一人である場合
(2) 財産が普通預金のみで、キャッシュカードで出金できる場合。

このように後見制度を利用しない選択をした場合でも、親族として行政の介護サービス手続き・病院の入院手続き・施設入所契約はできますが、家庭裁判所の監督がなくとも、本人の為に最善の方法を選択する必要があることは言うでもありません。

「重要なポイント」

(1) 法定後見制度は基本、中途で終了することができませんので、後見等開始の申立をする前に、充分な検討をしていただきたいと思います。
(2) 出来る事、出来ないことがあることを理解してください。
(3) 後見制度を利用しない選択肢も有ります。

「対策」

何事にもメリット・デメリットがあることを意識していただき、後見制度利用の可否を含めて、本人・推定相続人の状況を専門職に相談していただき、最終的に判断をしていただきたいと思います。


執筆者紹介  終活よろず相談士 M1850BX006
司法書士 土 井  節(ドイ タカシ)
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