「司法書士土井節の法律豆知識」11

「司法書士土井節の法律豆知識」11

司法書士 土 井  節

「民法(相続関係)改正について」

民法改正は法律として成立していますが、それぞれ施行期日が異なり、当該期日が来るまでは経過措置が定められています。
今回は遺留分制度に関する見直しについて説明いたします。
(1) 施行期日は2019年7月1日です。
(2) 経過措置として、この法律の施行の日前に開始した相続については、旧法が適用されます。

「旧法の遺留分制度の問題点」

(1) 遺留分減殺請求の行使により、不動産に共有関係が生じていた。
(2) その結果、共有物分割の手続きが必要になる。
(3) 結果的に円滑な事業承継の障害になる。

「旧法の遺留分制度の問題点の対応策」

(1) 遺言者が遺言で出来ること
・附言事項に記載すること-遺留分請求権利者に請求を思いとどまるように
・遺留分減殺請求の順序の指定-事業承継に必要な不動産を減殺の順位を後に
することで、結果的に対象から外す。
(2) 遺留分請求権利者に生前に依頼すること
 ・協議の上、遺留分請求権利者に生前贈与をした上で、同人から遺留分減殺の
放棄の申出を家庭裁判所に提出してもらう。

「遺留分制度に関する見直しの要点」

(1) 遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化する。
 ※旧法で問題(1)とされた遺留分減殺請求権の行使によって、不動産に生じ
る共有関係は生まれず、金銭債権が生まれることになった。
(2) 金銭債務の支払いに関する相当の期限の付与
 ※遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が、金銭を直ちには
準備できない場合には、受遺者等は裁判所に対し、金銭債務の全部又は一部
につき期限の許可を求めることができる。
(3) 遺留分算定の基礎となる相続財産に含まれる生前贈与の範囲
 ※旧法では、遺留分算定の基礎となる財産に含める生前贈与は相続開始前の1
年間にしたものに限りその価額に算入するものと規定しているが、判例およ
び実務はこの規定は相続人以外の第三者に対して贈与がされた場合に適用さ
れるものであり、相続人に対する贈与は期間制限がないとされていた。
新法では相続人に対する生前贈与は相続開始前の10年間にしたものに限り
その価額に算入するものと規定された。

「留意点」

原則として、遺言作成において、相続人の遺留分を侵害しないことが大切です。


執筆者紹介  終活よろず相談士登録 M1850BX006
司法書士 土 井  節(ドイ タカシ)
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