「司法書士土井節の法律豆知識」5

司法書士 土 井  節

♦相続について、間違いやすい言葉のシリーズ5です。

今回は「法定相続分割合」⇔「遺産分割によった相続分」

「法定相続分割合」

法定相続分割合とは相続財産について、相続人の属性(例えば、配偶者と子供)によって、民法が定めた相続分の割合であって、相続人の協議の際に基準になる数字です。

「遺産分割によった相続分」

遺産分割によった相続分は法定相続分割合を参考にし、各相続人の事情を考慮
した上で、相続人全員の合意により、決定した相続分を言います。

「重要なポイント」

(1) 法定相続分割合は相続人の組み合わせによって異なります。
 ① 配偶者と子供全員の割合:各2分の1
 ② 配偶者と親全員の割合:3分の2と3分の1
 ③ 配偶者と兄弟全員の割合:4分の3と4分の1
 ④ 配偶者が先に亡くなっている場合は各相続人の割合は均等になります。
(2) 子供がいれば、親や兄弟は相続人になりません。
(3) 子供がいない場合でも、親が存命であれば、兄弟は相続人になりません。
(4) 子供がいない場合には相続放棄をして、相続人にならない場合も含みます。
(5) 遺産分割協議は相続人全員で行う手続きで、全員の合意が必要です。
(6) 相続人各人が相続分の放棄書面や相続分の譲渡書面で意思表示をしていても、相続人全員の分が揃っていれば、有効です。

「対策」

遺産分割協議をする場合でも、法定相続分割合は目安のなる割合ですので、参考に、していただいたらと思います。
又、配偶者と子供二人が推定相続人で、財産もあるが、負債の可能性がある場合、限定承認手続きをする場合には、相続人3名全員で限定承認手続きをすればいいのですが、子供二人が相続放棄をすると、推定相続人の範囲が親や兄弟に広がり、相続人全員での限定承認手続きが難しくなります。
この場合には、子供一人は相続放棄をしないで、配偶者とともに限定承認手続きをされるのがいいのではないでしょうか。


執筆者紹介  終活よろず相談士登録 M1850BX006
司法書士 土 井  節(ドイ タカシ)
事務所 東京都港区芝大門2丁目12番3号 芝柳生ビル2階
電話   03-6638-6520
携帯電話 080-5207-1951


「司法書士土井節の法律豆知識」4

司法書士 土 井  節

♦相続について、間違いやすい言葉のシリーズ4です。

今回は「積極財産」⇔「消極財産」

「積極財産」

相続財産の内、資産とされるもので、例えば、不動産・株式・預貯金・現金・債権等を言います。

「消極財産」

相続財産の内、負債とされるもので、例えば、借金・滞納税金・連帯保証債務等
を言います。

「重要なポイント」

(1) 生命保険は受取人を被相続人本人にしていない受取人指定がある場合には、相続財産にならず、受取人の固有の財産になります。
(2) 死亡退職金については、退職金規定において、その性質をどのように定めているかによって、相続財産になるかの判断がなされます。
(3) 一般的には、相続財産の積極財産と消極財産を対比して、積極財産が多ければ、相続の単純承認手続を選択し、消極財産が多ければ、相続放棄手続を選択します。 消極財産が明確にならない場合(連帯保証債務の可能性・個人間の借金の可能性)等、思わぬ負債を負う危険性がある場合には限定承認手続を選択する事になります。
(4) 相続放棄手続及び相続限定承認手続は、家庭裁判所に申し立ててしなければなりません。
(5) 相続の単純承認手続きは、法定単純承認というみなし規定により、期間の経過により単純承認したことになります。

「対策」

相続財産とならない場合の生命保険金や死亡退職金は、当然に、遺産分割協議の対象になりません。 但し、相続税の関係では、一定の控除金がありますが、相続財産の中に含まれますので、注意をしてください。


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「司法書士土井節の法律豆知識」3

司法書士 土 井  節

♦相続について、間違いやすい言葉のシリーズ3です。

今回は「相続放棄」⇔「遺留分の放棄」

「相続放棄」

相続放棄は被相続人の死亡後に出来る手続きで、家庭裁判所に相続放棄を申し立て、裁判所の審判により、相続人にならない手続きです。

「遺留分の放棄」

遺留分の放棄は相続の開始前に、遺留分を有する推定相続人が行う事が出来る
手続きで、家庭裁判所に遺留分の放棄を申し立て、家庭裁判所の許可の審判を
得て、あらかじめ遺留分を放棄する事が出来ます。

「重要なポイント」

(1) 遺留分権利者には被相続人の子供(第一順位)・親(第二順位)が該当します。
(2) 遺留分権利者は遺留分を侵害した贈与や遺言(相続・遺贈)について、当該受贈者・遺言執行者・相続人に遺留分減殺請求を行い、遺留分を侵害した範囲で、財産を取り戻すことができます。
(3) 遺留分の放棄が相続の開始前に限定されているのは、相続開始後は遺留分を侵害されていたとしても、遺留分減殺請求権を行使しなければよいので、相続開始後に遺留分の放棄手続きは不要な為です。
(4) 遺留分減殺請求には期間制限があります。時効による消滅は相続開始及び
減殺すべき贈与・遺贈を知ったときから1年です。 又、除斥期間として
相続開始から10年経過すると遺留分減殺請求は出来なくなります。
(5) 遺留分の放棄の撤回・取り消しは原則出来ません。 
但し、重要な前提条件に変化があった場合には、家庭裁判所に遺留分の放棄取り消しの申し立てを行い、家庭裁判所の許可の審判を得て、遺留分の放棄の取り消しをする事が出来ます。

「対策」

家業を長男に継がせる方法として、長男に相続させる公正証書遺言と他の推定
相続人は遺留分の放棄の申立を家庭裁判所に行う事で、家業を円満に長男に継がすことができます。 当然に、生前に他の推定相続人に適度な財産分けをしておくことも、必要になります。


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「司法書士 土井節の法律豆知識」2

司法書士 土 井  節

♦相続について、間違いやすい言葉のシリーズ2です。

今回は「相続放棄」⇔「相続分がない遺産分割」

「相続放棄」

相続放棄は相続の開始を知って、なおかつ自分が相続人になったことを知って
から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し立て、裁判所の審判により、相続人にならない手続きです。

「相続分がない遺産分割」

相続人間の遺産分割協議により、相続人中、ある人が相続財産を一切もらわない
との協議が成立する事があります。 この場合のある人は自分は相続放棄をして
いると思い込んでいる場合が多いですが、当然に誤りであって、一切相続財産を
受け取らなくても相続人の地位は失われていません。

「重要なポイント」

(1) 相続放棄の審判により、相続人から離脱する手続きですので、相続債権者から、相続負債を請求されても、相続放棄受理証明書を債権者に送付して、支払いを免れる事が出来ます。
(2) 相続放棄の審判は当該被相続人についての手続きですので、父の相続では相続放棄をしたが、その後、母の相続では相続人として権利行使する事は可能です。
(3) 相続放棄の審判により、推定相続人の順位(子→親→兄弟)が繰り下がっていくことに注意してください。
(4) 遺産分割協議書により、自分に相続分がないある人は、仮に、相続負債はある特定の人が引き受けると記載されていても、相続債権者から相続負債を請求されると、相続人としての地位があるため、支払いを免れる事が、できません。

「対策」

相続負債が相続財産より確実に多い場合は推定相続人全員が、事業承継がらみで長男が、全て相続負債を含めた相続財産を承継する場合は長男以外の推定相続人が相続放棄する方法が考えられます。
相続放棄をした場合には、相続放棄受理証明書をかならず取得しておく事。 
又、後順位推定相続人への相続債権者からの不意打ちを防止する為に、先順位
推定相続人が相続放棄した事を連絡しておくことも大切です。


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司法書士さんの読んで得する「終活豆知識」

司法書士 土 井  節

♦相続について、間違いやすい言葉についてのシリーズ

今回は「代襲相続人」⇔「相続権を承継した相続人」

「代襲相続人」

代襲相続とは被相続人が死亡する前に推定相続人(子・兄弟)が被相続人より
先に死亡した場合に、子の子供や兄弟の子供が死亡した推定相続人の地位を承継して、相続人になることです。 
このようにして、相続人の地位を承継した、被相続人から見て、孫や甥や姪を代襲相続人といいます。

「相続人の地位を承継した相続人」

一方、相続が開始し、子・兄弟が相続人として、確定したのち、遺産分割協議
未了の間に、当該相続人である子・兄弟が死亡した場合に、被相続人の相続人
の地位を、死亡した子・兄弟の相続人が承継します。   

「重要なポイント」

(1) 代襲相続における死亡した推定相続人(子・兄弟)の配偶者は代襲相続人にはなりません。
(2) 代襲相続における推定相続人である子の代襲は子供・孫と代襲されます。
(3) 代襲相続における推定相続人である兄弟の代襲は子供一代限りです。
(4) 相続人の地位を承継した相続人には死亡した相続人(子・兄弟)の配偶者は含まれます。
(5) 遺産分割協議未了の期間が長いと、相続人の地位を承継した相続人には、子供一代限りとの制限は当然にありませんので、相続人の範囲が非常に広がり、相続人の特定が非常に困難になります。

「対策」

兄弟が相続人である場合には、遺産分割協議の合意が早く出来る事が肝心ですが、一部の相続人の為、相続遺産分割協議の合意が困難な場合には、個別に相続分の放棄書面を取得する等、相続人の地位を承継した相続人が増えない努力も大切になります。


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司法書士土井節のちょっとお耳を

平成29年4月1日
司法書士 土 井  節

一般社団法人全国資産終活支援センターに執筆させていただきます司法書士の土井 節と申します。
よろしくお願いいたします。
終活にもいろいろあるとは思いますが、今回は遺言の中で遺言執行者について、お話させていただきます。

「遺言執行者」

皆さんが終活を考える場合に、遺言をすることが一つの重要な選択になると考えます。 
その際、遺言の中で、遺言執行者を選定しておいた方がいいのかを説明していきます。 
そのために、遺言執行者が何ができるのかを知ることが重要です。 
今回は<相続財産の処分に絞って、説明していきます。

(1) 不動産を推定相続人に相続させる遺言をした場合には、遺言の効力発生日
(遺言者の死亡日)に確定的に当該相続人に当該不動産は承継されます
ので、相続登記について遺言執行者の関与はありえません。
(2) 不動産を推定相続人以外の個人・団体に遺贈する遺言をした場合には、遺
贈の登記の義務者に遺言執行者はなれますので、遺言の中で、遺言執行者を選定しておいた方がいいことになります。 
この選定をしておかないと、相続人全員の協力を求めなければならなくなります。
(3) 預貯金その他の金融財産等を推定相続人に相続させる、又は、推定相続人
以外の個人・団体に遺贈する遺言をした場合には、銀行等の対応によりますが、通常は相続人全員の署名・押印さらに印鑑証明書の添付を求められますが、遺言の中で、遺言執行者を選定しておくと、受遺者並び遺言執行者の関与のみで手続きが完了すると考えられます。

   

「重要なポイント」

(1) 遺言の内容によって、遺言執行者を選定しておいた方がいい場合と不要な場合がある。
(2) 遺言執行者を選定する場合には、遺言執行者の報酬を遺言の中で定めておく事。 この場合には遺言執行者が関与できる相続財産の額によって、定める事が重要です。 
但し、遺言で遺言執行者に選定されても、委託を辞することもできるので、一方的な選定ではなく、遺言者と指定遺言執行者との合意が必要です。


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